『幸森さん…!!』



幸森さんは思ったよりも遠くに行ってなくて

すぐに出会うことができた。



部屋をすぐに飛び出したはいいけど

もし会えなかったら間抜けすぎる…



振り向いた幸森さんは

ちょっと驚いた顔をしたけれど

すぐににこやかに笑った。



『…あの、忘れ物。

今日必要なのかと思って…ジッポ…』



『ああ…!悪いね、助かったよ!

…取りにきて忘れるなんてしょーもないな…。』




ハハハ…と力なく笑って

僕に笑いかけた。



僕は曖昧に笑って

『…あの、……今日って何かあるんですか?』

と聞いたけど、

本当に聞きたいのは

こんなことじゃないだろ!!




『あ〜…今日ね…』



幸森さんは少し気まずそうに笑って続けた



『今日は別れた妻との最後の精算なんだ。』




相変わらずにこやかに笑って言うので

一瞬では会話の内容が理解できないでいると


『このジッポは妻からの最初の贈り物でね…

思い出があるから返してくれって…』



僕は正直、どうゆう反応をしていいか困っていた…



自分から聞いたくせに…。