…いや、冷静になれ俺。


『幸森さんは不倫する男はどー思います…?』


唐突過ぎたか…?


僕は普通にいったつもりだったけど


幸森さんが、 フッ、と笑った気がした。



『…そうだね、難しいけど…

恋愛は同時平行にはしたくないな…』




『ぷぷっ…

そーよね。幸森さんは

恋愛は不器用そう!仕事はできるのにね。』



『そんなこと言って…
やるときはやるんだぞ。』



冗談ぽく言った幸森さんに『はいはい、
そーですか』と言った百合の顔は

少し困ったように笑ってた。




『あ!幸森さん今日は奥さんの…!』




『そうなんだ、だから…

そろそろ行くよ。』




…”奥さん”。

僕の中にストンと落ちたこの言葉は

じわじわ熱をもって広がった。

やっぱり不倫かよ。



幸森さんが『じゃあ。』と言って
出ていったドアをしばらく見つめた。



男と二人っきりなのに

自分の彼女を残して帰るか…?




ふと、手元のテーブルを見ると、
幸森さんが取りに来た、

忘れ物のジッポがあった。




気づいたら僕はジッポを手に

幸森さんの後を追っていた。