『アキ、…帰ろう。』


私は何も言わなかった。


ご機嫌とり??


…本当は百合さんと話したいことがあるくせに…!



私は怒りと悲しみで
かろうじて涙は流さないでいられた。



優ちゃんが困ったような悲しい顔で
私の腰に手をあてて誘導する。



…絶対家にはあげないんだから!



優ちゃんがコンビニに寄りたいと言うから、ついていった。


なにか飲みモノを買うみたいで、
私は雑誌コーナーに逃げた。


優ちゃんの匂いが、
近くにありすぎて息苦しかったから…


なんで…
こんなに好きになっちゃったんだろう…


雑誌コーナーで適当な雑誌を手にすると

恋愛・結婚の特集情報誌だった。


”あなたが結婚を決めた理由”

と印字されてたのを見た。


その瞬間、外の駐車場の車のライトが
目の端にチカチカして車の方を見た。



車には男の人が乗っていて
助手席に目を移すと…

百合さんだ。


今日着てきてた白いレースのワンピに黒カーデにトレンカと高めのヒール。


白ワンピと色白の手足がバランスがいい。


暗がりで顔は見えなかったけど
あれは絶対、百合さんだった。



優ちゃんは気づいただろうか…?

百合さんに。



私は優ちゃんの方を見れなかった。



もう一度百合さんを見ると
無表情で車に乗り込んで
車はどこかへいってしまった。



私は何事もなかったかのように
もう一度雑誌に目を落とした。


”結婚した理由”


”お前とずっと一緒にいたいから”


ふーん…

私は”おまえ”なんてまっぴらごめんだけど、
それがいいって言う人もいるしね。



そんな記事を読んでると

優ちゃんがやってきた。



わたしは相変わらず優ちゃんに
どうゆう態度をとっていいかわからず
何も言えずにいた。




優ちゃんはさっきより
ちょっと怖い雰囲気をもってやってきた。



『アキの部屋に行こう』



いつもより低い声で言われた言葉は、
わたしの神経を麻痺させていた。