僕らはホットケーキを食べ終えると

以前からアキが観たいと言ってた映画を

観に行くことにした。



アキの観たい映画は決まって恋愛モノで

とても彼女らしいと思うけど、

僕はいつもそのほとんどを、

眠気を堪えるのに必死だったりする。



アキと僕の趣味は違うことが多い。



だからと言って嫌と言う訳じゃなく、

逆に新鮮な発見があることもあるし。



映画は結構満員で、僕の感じかたの方が
おかしいのかと思うほど恋人達は楽しげに観ていた。



映画館で、その映画のポスターをみると

お決まりのように

『全米が涙した大ヒット作品』

と詠われていた。



いったい、全米はどれだけ涙もろいんだろう…。





アキは、この映画のどこに
そんな泣くシーンがあったんだ…?
と思う映画でも目に涙をため、
『良かったね』と言った。




僕にはやっぱり解らなかったけど

いつものように『そうだね』と答えて

彼女の話を聞いていた。



話しているときの彼女を見てるのが好きだ。



彼女は僕をまっすぐみて真剣に

自分がどこに感動したかこと細かく説明していて

僕はその間、静かに相づちをうちながら


彼女が時折飲みモノを飲むときに
伏せられた長いまつ毛や

口に手を当てて笑うときの
白く柔らかな指に目を向けてしまう。




アキを見てると女の子は皆こんなに
おしゃべりなんだろうか、と感心してしまう。



百合といると、アイツはそんな

”おしゃべり”と言う感じじゃないからなぁ。




憎まれ口を叩いてても

皆と騒いでいても

妙に”静”というか、

”落ち着き”みたいなものがある。




アキはその正反対で、

全ての語尾に♪がつくような

”弾む”ように話す感じだった。