6月14日月曜日。
丁度あの日から1ヶ月が経った。
あの日と同じ放課後の教室で、僕はゲンを待っていた。
窓の向こうに視線を移す。
あの日は綺麗な夕焼けだったが、今日は曇り空が広がっている。
ガラリ、とドアが開いた音。
「………………ゲン、じゃないか」
「残念。あたしでした」
扉の側には、悪戯が成功した幼子のように微笑む彼女がいた。
彼女、柊イトイは腰まである黒をたなびかせながら歩み寄ってくる。
僕は動く気力がなかったため、自分の机に腰掛けたままだった。
「あーあ、机に座っちゃいけないんだよう」
「別に、どうだっていいじゃん」
「うん、どうだっていい」
僕がぽつりと呟く。君って非凡だよね。
すると彼女はにんまりと笑い、褒め言葉? と尋ね返してきた。
僕は黙って笑っているだけ。彼女は察したようだった。
「人間誰しも非凡なのよ」
「それを君が言うと、信じ難い」
「失礼だね。じゃ、ばいばい」
「あ、今日はキスしないんだ」
スカートを翻し、教室を出ようとする彼女へかけた言葉がそれだった。
僕はしまったと思いつつ、様子を見る。
彼女は、すうと大きく息を吸って、言葉を吐き出した。