6月8日火曜日。

僕と彼女の関係に進展が訪れた。

それはあってはいけない進展なのだが。



「あたしの息、美味しい?」


セカンドキスを奪った後、柊イトイはそう言い放った。

何とも気持ち悪いことを言う奴だ、と思いつつ、僕はただ酸素を取り入れていた。


しかし彼女はいつまでもしつこく尋ねてきたので、僕は吐き捨てるように答えを投げつける。



美味しいわけないだろ。



すると柊イトイは、乾いた笑いを吐き出してこう言った。



美味しいと思ったんだけどな。



僕は思わず苛立って、問いを投げかける。

僕の息は美味しい、のか。

それに対する回答は、肯定。

僕は目の前にいる女が、ぐにゃりと歪んだ妖怪のように見えて、目を逸らした。


ねえねえ、キスしようよ。


彼女の問いかけへの返事には、無視を贈った。