柊イトイという女子は、小学生の頃からいつも噂が絶えなかった。

親に対するものから、恋愛的な、そういうものまで。

でもそれを本人は苦にしていなかったし、周りはそういった行動に出なかったので特に異常はなかった。

一番有名なのが、「柊は実は捨て子」というもの。

それを尋ねた先生に対して本人は、「子供は黙って授業を受けていればいいのではないですか」と言い返したそうだ(その場にいた職員曰わく)。

実際柊本人は文武両道な人間で、周りからの評価といえば「優等生」だった。

性格に難のない優等生など珍しいものなので、周りは「そういうものか」と諦めに近いものを抱いていた。



一方哀れな被害者である僕は、どこにでもいる日本国民。

良く言えば平凡、悪く言えば無個性。そんな人間。

だから、どうして僕が彼女の被害を受けなければならなかったのか。全く見当がつかなかった。


多分、あの優等生は思いつきで行動しているのだろう。
そう勝手な結論を出し、僕は考えるのをやめた。