横からいきなりスライディング。


足にはボールの芯を捉えた感触がした。

よし!!奪った!!!!


「楠木 円かぁ。お前、足元見てみぃ~??」

「……え??」

「くくくっ!!お前に簡単に取られるわけねぇだろぉ~??」


確かに、取ったはずなのに。

ボールの感触が、足に残ってるのに。


奪ったはずのボールは、奴の足元のままだった。


「ざーんねん☆俺は森山 飛鳥と勝負したいんだよねぇ。邪魔しないでくれるぅ~??」

「飛鳥…」

「円大丈夫。俺がまた奪って前に上げるから」


やっと口を開いた飛鳥が発した言葉は、凄く力強かった。


「じゃあ遠慮なく…♪」

奴はそう言うと、トップスピードに乗って、飛鳥の元へドリブルを始めた。


精密で絶妙な足さばき。

飛鳥より先に抑えようとしたDFは皆、軽々と抜かれていく。


エラシコ(片足でボールを左右に動かすフェイント)や、ルーレット(身体を半回転させて相手を抜く技)、ヒールリフト(かかとでボールを上げ、相手の頭上を通して抜く技)…。

彼はドリブルをしながら次々と技を繰り出し、DFをもて遊んでいた。


まるでその姿は、自分の強さを見せ付けているかのようで。


確かに凄いかもしれない。

けど、飛鳥の方がそれぞれの技のレベルは上だし!!


「やぁどーも♪」

「…。」

「「飛鳥止めろー!!!!」」


ついに奴の前に、飛鳥が立ちふさがった。

飛鳥頑張って…!!!!