いつだって意地悪で不器用で、優しさの欠片もない晃汰。

でも、今みたく子供みたいな一面があったり、たまに出る優しさを知ってしまったから。


晃汰の本当の姿を、少しだけ見てしまったから。


どんなに飛鳥が想ってくれていても、好きになれないんだ。

どんなに飛鳥が優しくしてくれていても、好きになれないんだ。


…ごめんね、飛鳥。


「おい、何ボーッと突っ立ってんの??」

「へ??」

「さっきから何回も呼んでたのに、立ち止まったままだったぜ??」

「ぅえ!?まじ!?」


は、恥ずかしい。


「そーいえばお前、のぼせたっぽかったんだっけ」

ードキンッ


“あちぃ。部長に冷えピタでも貰っとけ”

額に晃汰の手のひらがあてられて、そう言われた。


「え、じゃあ連れ出しちゃ駄目だったじゃん!!」

「すっかり忘れてた」

「ちょっと浜口氏ー、しっかり!!」

「ぶふっ!!浜口氏って!!」


あんな優しさの出し方は、ずるい。

心が敏感に、晃汰の優しさに反応してしまう。


「そんなら帰るかー」

「うん」

「忘れてて悪ぃな」

ートクン

「本当だし!!俺全然知らなかった」


そんな会話を交わしながら、3人で民宿へと戻った。


帰り道に、飛鳥に手を握られる事はなかった。