ーズキン ズキン…


階段を降りる度、胡桃から離れる度に、胸の痛みは増していく。

あたしの中の何かが、まるで風船のように、大きく膨らんでいた。


「…っは……!!」

一気に階段を駆け下りたあたしは、肩を上下させて呼吸を整えた。


“違…違うよ……!!!!”

足を止めると、さっきの胡桃の言葉が鮮明に蘇ってきて…。

「やだぁっ……!!」

あたしはそれをかき消すかのように、再び走った。


ードンッ


「痛っ…!!」

誰かとぶつかった衝撃で、見事に吹っ飛ばされたあたし。

「ご、ごめん!!…って、円??」

「へ…??」

驚いて顔を上げると、そこにはあまり会いたくない人がいた。


「飛鳥…」

「どーした??なんか必死に走ってたけど…」

「……っ」


駄目だ。

飛鳥には、死んでも言えない。


「な、何でもないよおっ??」

元気な笑顔を見せて、飛鳥の心配を無くしたかった。

だけど、飛鳥にはバレバレ。

「嘘つくなっ!!…なんか、あっただろ??言ってみ??」


…ずるい。飛鳥は、ずるいよ。

簡単にあたしに嘘を見破って、核心をついた。


何でそんなに、あたしに優しくするの…??

あたしは、飛鳥を好きになれないのに…。