レオは狂暴化し、わけの分からない奇声を上げ続ける茜を、包み込むように見つめていた。


いつも愛くるしい笑顔を振りまいていた茜の姿は見る影もなかった。


それでもレオは、暴れ続ける茜を抱きしめていた。


爪で腕を傷つけられようとも、暴れた拍子に頬を殴られようとも、レオは茜を離そうとはしなかった。


「このまま放っておくわけがないだろ。俺の血を与える」


「アホ! それじゃ血の儀式になる!
血の儀式は互いの血を交換しあってこそ成り立つんだ。

バドでさえ俺の血を吸った!吸わなければヴァンパイアの身体がもたないからだ。
今の茜ちゃんから血を吸えば、それこそ命取りになる!」


「茜の血は吸わない。俺の血を与えるだけだ」


「でも茜ちゃんは假屋崎に血を吸われとるんや! 
血の儀式に三人が関わるなんて聞いたことがない!

あかんあかん! 絶対失敗するで! 
茜ちゃんはヴァンパイアになるどころか、醜いモンスターになるかもしれん!」