三人は人気(ひとけ)のない公園で、林に隠れるようにして茜をいったん降ろした。


「日向、お前いつの間に空飛べるようになったんだよ」


「飛んでへんわ! ジャンプやジャンプ!」


どんだけの跳躍力だよ、と半ば呆れたように呟いたレオの言葉は、茜の異変によって流れていった。


茜の瞳は血が内側から溢れたように赤くなり、フーフーと動物が呻くような息遣いを始めた。


「茜!?」


「茜ちゃん!?」


二人は懸命に茜の意識が戻るように名前を呼んだ。


しかし二人の思いとは裏腹に、どんどん苦しそうになり、制服のりぼんを破るように解き、草を引きちぎり、爪を地面に食い込ませた。


「あかん、狂暴化しとる。血を吸われすぎたんや。
どないしよ、救急車呼んで、輸血して……」


「ダメだ。ヴァンパイアに血を吸われたら病院にいっても無駄だ。
このまま放っておけば、あと数分足らずで死ぬ。間に合わない」


「せやけど、このまま黙って茜ちゃんが死んでいくの見てるんか!?」