くっと悔しさに喉を詰まらせて、茜を見下ろした。


「どうしてこんなことにっ!」


茜の首筋には二本の牙の痕がくっきりと残っていた。


そして、茜の身体から大量の血が失われてしまったことが、レオの嗅覚で感じ取れた。


「あかん。人間たちが来る。説明するのはやっかいや。
ここから逃げるで」


「逃げるっていってもどうやって」


「俺の後ろに乗るんや! 窓から飛び降りる!」


「ここは四階だぞ! それに二人も抱えて走るのは無理だ!」


「コクーンの怪力を馬鹿にすんなよ」


そう言うと、日向はしゅるしゅると狼の姿に戻っていった。