レオが屋敷から出ると、森の中で動く黒い塊が目についた。
犬にしては大型で、狼にしては少し小さい。
人懐こそうなくりくりの瞳がレオを捕えた。
「よっ」
「日向……。なんでここに」
「随分しけたツラしとるやないか。どないしたん?」
レオは答えず、日向の横を通り過ぎた。
日向はその後ろにトコトコついていく。
「日向、ついてくるなよ」
「どこに行こうとしてんねん。そっちは王宮の反対方向だぞ」
「どこでもいいだろ。一人になりたいんだ」
「お前一人で行ったら森の中で迷子になるだけや。
街に行きたいんならこの森を抜けないといかんけど、歩いたら丸一日はかかるで」
「ごちゃごちゃ煩(うるさ)いな。
俺は今、何も考えたくないんだよ」
日向はレオの顔を見上げ、ため息を吐いた。
「しゃあないな。俺の背中に乗れ。連れてったる」
「背中に?」
「バイクに乗るより刺激的やで」