月明かりが寝室に降り注ぐ。


黒毛の狼は月明かりを浴びると、月に向かって「オォーーン」と甲高い声で遠吠えをした。


すると、狼の瞳の色が紅くなり、みるみるうちに人間の姿になっていた。


黒のトップスに黒色のジーパン。


それに、先端の尖った黒のショートブーツを履いた男は、レオに背中を向けて、窓から見える月明かりを存分に体に浴びていた。


その背中は、怜央の知る人物によく似ていた。


全身黒の服装だからか、明るい赤色の髪色がよく目立つ。


レオは狼の声と話し方を思い出して、まさかと思った。


まさか。そんなこと、あり得ない。


あいつは死んだはずだ。


狼から人間になった男は、ゆっくりと怜央の方に振り返った。


ニカっと笑った大きな口。


整った目鼻立ちから零れる人懐こい瞳。


その顔は紛れもなく……。