バドに聞いたのにも関わらず、黒毛の犬はレオに向かって言葉を発した。


「しゃ…喋った! 犬が喋った!」


「だから狼やって言っとるやないか!」


再び黒毛の犬……ではなく狼はレオに向かって叫んだ。


「魔界って、普通に動物が言葉話すのか?」


バドに向かって言うと、バドは難題を出されたかのように悩み、そして難しい顔をして答えた。


「コクーンと呼ばれる魔物を動物扱いするのなら、答えはイエスですけど、魔界にも動物はいますからねぇ。
鳥や動植物などは人間界と同様に話しません」


「じゃあ、なんでこいつは……」


「俺は狼人間やからな」


黒毛の狼は、得意気に鼻を鳴らした。


「バド、カーテン開けてくれへんか」


バドは頷くと、窓のカーテンに手をかけた。


「今日は綺麗な満月ですよ」


バドがそう言い、カーテンを開けると、外は夜で大きな丸い月が現れていた。