バドは黙った。


「目の前で人が死んだのに、お前は何もしなかった!
お前きっと強いんだろ!?
なのに、助けようともしなかった!」


レオの声が荒立っていく。


「ヴラド様に、全てが終わるまで手は出すなと言われておりましたので」


「親父がなんだよ! 
人が……死んだんだぞ! 
お前は何も思わなかったのか!?」


「………………」


「お前も赤銀のように、人間の命なんてゴミみたいなもんだと思ってんのか!?
ふざけんなよ! 日向はな……。
日向は俺の友達だったんだ。
それなのに……」


レオの瞳が涙で潤んでいった。


頭を抱えていると、黒毛の犬が怜央の手をペロペロと舐めた。


レオは、犬を見ると不思議と心が穏やかになっていた。


「そういえば、この犬なんだよ。お前のペットか?」


「犬やないで! 狼(オオカミ)やっ!」