黒毛の犬が尻尾を垂れて、後ずさった。


「誰がそんなことをしろなんて頼んだよ!?」


「ヴラド様に頼まれました」


レオは、誰もそんなことを頼んでいないと思っていたので、サラリと言ったバドの言葉に驚き言葉を詰まらせた。


「……何?」


レオは斜め上に目線を吊り上げ、バドを睨み付けた。


バドは飄々と言葉を続ける。


「全てはヴラド様のご指示でございます」


全て手の上で転がされているような気がして、レオは目の前が一瞬真っ暗になった。


「お前……。もしかしてあの校庭での出来事。全て見てたのか?」


バドは一泊置いて、「はい」と返事をした。


「全部見ていながら、助けようとしなかったのか?」


「助けるなとヴラド様に言われていましたゆえ」


「俺があのまま死んでも良かったってことか」


「あのような男にレオ様が殺されるわけがありません」


「でも、日向は死んだ」