「圭介?えっ、な・・・なんで・・・・。」
ずっと会いたくて、ずっと会えなかった。
そこには、私の大好きな人がたっていた。
圭介は肩に担いだスポーツバッグを少し持ち上げると、
「5日間休みが取れたから、遊びに来たよ。」
と、屈託のない笑顔で私の問いに答えた。が、途端慌てて側による。
「・・・ど、どうした?」
画面が、滲んでいく。
圭介の顔が、ゆらっとゆれる。
「とりあえず、中に入れてよ。」
私の手から鍵を取ると、圭介はドアを開けて私を中に入れた。
促されるままに部屋に入って、荷物をおく。
布団と机だけしかない部屋の中を見て、圭介は加奈子らしい・・・と笑った。
「シンプル イズ ベストが信条だもんなぁ。」
そんな圭介を、立ったまま私は見つめていた。
「どうしたの?加奈子。しばらく会わないうちに、泣き虫さんになったのかな。」
涙が、とめどなくあふれる。
とめる気もなかった。
「辛い。」
「ん?」
やっと言えた言葉は、その一言だった。
「辛い・・・辛いよ・・・。」
「加奈子。」
圭介は、じっと私を見ている。
「辛いの?」
「辛いの。」
止まらなかった。
「パートさんは好き、仕事も好き。楽しい・・・楽しいけど、責任につぶされそうなの。もう、辛いの。嫌なの・・・・。」
「・・・。」

何もない部屋で、私の声だけが響いてる。
「休みの日に呼ばれて、仕事して。毎日毎日、自分が何のために生きてるのかわかんないの!自分がやってることが正しいのかそんなことばかり考えて・・・・。もう、嫌。こんな生活は、辛くて嫌!!」
圭介は、頷いて笑う。
「じゃぁ、辞めちゃおうか。」
その一言に、口をつぐむ。
少し考えてから、私は言った。
「・・無責任だよね・・・、そんな理由で辞めるの・・・。」
「十分やったよ、加奈子は。1年、見知らぬ土地で知り合いもいなくて。そんな中で続けてきたんだ、もう、十分責任は果たしたよ。」
「でも・・・!」
圭介は、ぎゅっ・・・と私を抱きしめた。
「もう、お休みしていいよ。店長、逆井 加奈子から。」
「・・・いいの?」
見上げる圭介の顔は、優しかった。
「うん、ゆっくりお休み。」
久しぶりに、私はぐっすりと眠ることができた。