「でもおかげで、家族を安心して村へ置いておけるという利点もあるのだけれどね」

「それでディーンは遠い町まで、アレックスを迎えに来ることができたわけね」

これから私たちが向かう彼の故郷には、奥さんと生まれたばかりの娘さんが待っているのだという。

ディーンも昔は巡礼やギルドの仕事をしながら、各地を巡っていたらしい。その途中で奥さんと知り合い、現在は故郷に腰を落ち着けているそうだ。

「今回はリアにどうしてもって、頼まれていたからね。アレックスが一人で村の外へは、あまり出たことがないから心配だったんだろう。
でも今回だけだ。俺は家族と少しでも離れたくはないし、もう長旅はしないつもりだよ」

「皆さ〜ん、ご苦労様です〜」

いつもの陽気なエドの唄う声が、前方から聞こえてきた。

「エド、ここは大丈夫だった?」

「勿論です〜。魔物は来ませんでしたよ〜」

赤々と燃えさかる炎の前に座り込んでいたエドは、持っている小型の楽器(ハープ)を弾きながら返事をした。

彼はいつも音楽を奏でており、唄いながら会話をしている。

両手が塞がっていて楽器が使えない状態でも、常にアカペラで唄いながら喋るという、かなり変わった癖の持ち主なのだ。

私たちはそんなエドをこの場へ残し、別行動で野宿をする準備をしていた。周囲に群がる魔物を退治していたのである。