「そろそろアクニカ村のギルドが、討伐に乗り出す頃なんじゃないか? この付近で魔物が急に増えだしたという話は、さっきの村でも噂になっていたようだしね」

倒した魔物の処理をしながらそう言ったのは、私と同じ精霊術士のディーンである。

彼はその証でもある外衣(ローブ)フードを目深に被っており、唯一見えている口元には不気味な笑みを湛えていた。

全身黒ずくめで、一見すると墓守にも見えるその姿は「死体を埋める」という作業も手伝ってか、正に邪悪そのものであった。

しかしその下には甘いマスクが隠れており、かなりの美形なのだ。

ディーンと従兄弟である剣士のアレックス。

美形の二人が揃えば、街中の女性たちが振り向かないわけがない。

しかし普段のディーンは「このほうが落ち着く」という理由からフードを被ったままで生活しており、この不気味な佇まいのおかげで通行人たちは誰も近寄ってはこなかった。

「それに何故かここ数年で、下位クラスの動きが活発化してきているという噂だ。
町や村が襲われる回数も増えてきているらしい。
国もその辺りの動向には、警戒しているらしいよ」

表面上の容姿とは正反対の爽やかな口調で、ディーンは続けて言った。