「ハッ、まさかこの前魔王に負けたということで、この戦でも俺が生き残れないと思っているのか!」

「いやいやいや、そういうのじゃなくて」

「だがそれは心外というものだぞ。
確かに俺は魔王に負けた。それは男らしく、潔く認めよう。
だからといって、この戦でも生き残れないという保障が何処にあるというのだ。
否。断じて否っ!
そのようなものなど何処にもないのだ。
戦というものは、蓋を開けて見るまでは結果が分からぬ。戦況が変われば、窮鼠猫を噛むことだってあるのだからな。
約束しよう。俺がこの命に代えても、君たちへの勝利を捧げてみせようと―――」

「だから、違うって言ってんでしょーがッ!!!」

どんっ!

私は思わずアレックスを背後から突き飛ばしていた。

「な、何をするのだエリスよ。いきなり非道いではないか」

「あ、ごめんごめん。あんたの話が長くなりそうだったから、つい」

地面で平伏した格好のまま、肩越しから恨めしげな目でこちらを見ているアレックスに対して、私は頭を掻きながら素直に謝った。

彼は人の話を聞こうともせず、訳の分からないことをまた延々と、熱い口調で語ろうとしていたのだ。途中から我慢ができなくなって、つい手が出てしまった。

「くすくすくす…」

ディーンがこちらを見て可笑しそうに笑っている。

「何か私、おかしなことを言った?」

私が困惑気味な視線を向けると、彼は慌てた様子で手を左右に振ってきた。

「ああ、スマン。君はやっぱり少し、リアに似ているなと思ったものだから」

「へ? 似ている??」