あの色を持つ者は、彼の記憶の中でも上位クラスの――とある一族だけである。

だが今までその一族が、人間の女に子を産ませたなどという話を聞いたことがなかった。

手に入るというのであれば、当然能力(ちから)は欲しい。

だが、それがもし事実だとするのなら、簡単に手を掛けることはできない。

何故なら中位が上位に刃向かうということは、自殺行為にも等しいからだ。

(何れにせよ今は、命令を完遂させることが先決)

魔族としての悪い癖が出たために、多少の寄り道をしてしまった。

しかしまだ目標の3人には、追いつけるはずだ。もしあの温泉村を既に出発していたとしても、行き先の手がかりくらいは掴めるだろう。

彼が目的地へ戻るために一歩を踏み出した時、頭上では羽音のようなものが聞こえてきた。

反射的に顔を上げる。

だが彼はソレを捉えることができなかった。

その前に、全身が炎で包まれていたのだ。