流れ込んでくる冷たい風。

カーテンやベッドシーツなどを舞い上がらせていく。

先程まで暖かかった室内の空気が一変していた。

ルティナは窓枠に手をかけると、いきなりその上に飛び乗った。

いや、飛び降りたのだ。

その流れるような一連の行動に驚いた私は、一瞬怯んでしまった。

が、ようやく我に返ると窓際に駆け寄った。

急いで下を見てみれば、正門に向かって庭を駆けていくルティナの後ろ姿があった。

ここは5階だ。

近くには樹木類なども無いし、真下には堅い地面が剥き出しになっている。

「アレックスさん〜それは無茶です〜!!」

その叫び声で顔を上げると、今にも続けと言わんばかりに飛び降りようとしている、窓枠に足を掛けた体勢のアレックスが目に飛び込んできた。

「ルティナにも出来たのだ。きっと俺でも可能なはずだぞ」

「アレックスさんとルティナさんとでは〜身体能力が違うと思うのです〜。
それにアレックスさんは〜ルティナさんと違って今〜装備を外した状態じゃないですか〜。
ここから飛び降りたら〜確実に大怪我をしてしまいますよ〜!!」

「……あなたたち、一体何をしているのよ」

窓際で何やら揉み合っている二人に対して、私は静かな口調で問い掛けた。

「エリスさんも〜止めてください〜。
アレックスさんが大変なのです〜」

「うむっ。先程のルティナを見た時、俺は突如閃いたのだ!」

アレックスがいつものように、拳を強く握り締めた。

そして涼しげな碧い瞳に灼熱の炎を宿らせると、一気に捲し立てる。