考え込むようにそう言ったルティナに対して、私は眉を顰めながら訊き返した。

ウチは先祖代々精霊術士の家系で、亡くなった母も精霊術士だった。

だから私がそれを目指したのも、ごく自然な成り行きでのことだ。

世間的にもそのような家だったり、親が師匠になったりということも大して珍しくはない。

なのに何が「成る程」なのか。

「いや……だがあまり気にすることでもないだろう。
あたしの知り合いでもそんな奴はいるが、その弱点を克服できなくても、この大陸で腕の立つ魔物ハンターとして、今でも立派に活躍しているよ」

「え……その人は、ソレを克服していないの?」

「以前会った時には、少しずつ快方に向かっていると言っていた。
が、精神的な問題はかなりデリケートなものらしい。
完全に克服するには、大分時間がかかるようだ」

「……そうなんだ」

そのような職業に就いていても、なかなか克服できないものなのか。

では私の場合、一体どのくらいの時間が必要なのだろうか。

「この国は他大陸と違って比較的平和だ。
それに海を越えたとしても、普通に巡礼をしていれば、さほどそのような場面に遭遇することもないだろう」

ルティナはそう言いながら窓の外に顔を移すと。

「あんたたちとはここでお別れだ」



かなり唐突に。

しかし今までの会話の延長でもあるかのように、ごく自然な流れの中で、私にそう告げてきた。