アレックスは『そんなつもり』で言ったわけではないと思う。

当然私にも分かっていた―――分かってはいるのだが。


「べっ、べッべべべべべべ別に……っ、ちっとも凄くなんかないわよッ」


私は何となく見られたくなくて、慌てて顔を逆方向へ逸らしていた。

「そ、そそれにッ、それを言うならあんただって。
自分の信念を貫こうと、一生懸命努力しているじゃない。
そりゃ、多少暴走気味になるところもあるけれど、それがアレックスだもの。
だから役目を私に押し付けたなんて思わずに、いつもみたいに堂々と、胸を張っていればいいのよ!」

続けて彼は何かを言ったようだが、その声は下から唸る風の音に掻き消されて聞こえなくなっていた。


私たちは既に瘴気の中へ入り込んでいた。

ようやく中心へ近付くことができたのだ。



先程までならその風に飲み込まれ、外へ放り出されるところだ。

しかし今回はこの場所に留まっている。



やはり思った通りだ。



私一人では、体重が軽すぎたのだ。

身体も支えられず、下から吹き上げる風に抵抗できなかった。