「……この俺がこんなザマで……すまない」

私の右肩へ凭れるようにして歩いていたアレックスが、不意に謝ってくる。

「何を言っているのよ、あんたらしくもない。
ここで弱気になったら、余計に瘴気に侵されるわよ」

「しかし世のため人のために働かなければならない……英雄であるこの俺が不甲斐ないばかりに、君にその役目を押し付けてしまうことに……」

「言っておくけどね、アレックス。
私はその『役目』を押し付けられたなんて、全然思っていないんだからね」

通常であれば、一人で落ち込むことはあっても、他人に弱音を吐くことのない彼に対して、少しばかり腹が立っていた。

「役目とか責任とか義務とか、最初からそんなものは関係ない。
それが例え絶望的な状況であったとしても、まだ一筋の光がそこに残っているのなら、私は途中で投げ出したくない」