瞬間アレックスの身体が傾き、私の上に覆い被さってくる。

「ちょ……っ、アレックス!?」

こちらへ縋(すが)るように倒れてくる彼を、私は内心焦りながらも背中で受け止めていた。

一見着痩せして見えるが、彼は立派な成人男性である。

日頃から剣士としても鍛えているし、身長や筋肉もそれなりにあった。

その大きな身体と重装備を、小柄な私が全身で受け止めているのだ。かなりの重量感である。



「君にだけ……責任を……」

荒い息遣いとともに掠れ気味の低音が、何とか足を踏ん張っている私の耳元で囁いてくる。

「……役目……俺が……」

何を言っているのかあまり聞き取れなかった。

もしかすると彼もルティナと同様に、既に正気ではないのかもしれない。

「ちょっとあんた、何でこんなところに居るのよ」

既に瘴気に侵されているのなら、立って歩くことさえもままならないはずだ。