ただ感覚的にいって、ほんの十数秒程度のことだと思う。

それは直ぐに収まった。

気が遠くなる寸前で耳鳴りが消え、徐々に力が戻ってくるのを感じていた。

私はようやく顔を上げる。

焦点が定まらなくなりそうになる目を必死で堪え、まだ痛む腕を押さえ込みながら、周囲を見渡してみた。



最初に飛び込んできたのは、目映い発光。

ゼリューが輝きに包まれていた。そして飲み込まれ―――瞬間で消える。



まさに消えた。消失したのだ。

輝きが増し、その姿を目視で捉えることが出来なくなった途端、光もろとも煙のように消え失せていた。

私は呆気にとられていた。

だが疑問に思う間もなく。



耳元をくすぐるような音。

今まで感じられなかった動く気配。

頬を撫でるような冷たい感触。



風だ。冷たい風が全身を通り過ぎていく。

周囲もいつの間にか暗くなっていた。だが完全な闇ではない。



徐々に薄くなりつつある星々の瞬きと、ぼんやりとした明るい空。

先程まで生い茂っていた木々に葉はなく、そのシルエットを浮かび上がらせている。





(これは……)

今の季節。見慣れた光景に思い当たる。