「何度来ても同じだ」

「やってみなければ分からない。それに」

彼女は左の眼帯へゆっくりと、右手を重ねる。

「あんたも知っているはずだ。
―――あたしの左をなっ!」

そのままの体勢でルティナは駆けていく。





ぱさり。



何かが頭上で聞こえてきた。

私はその音に釣られて顔を上げた。

そこには黒い翼が見える。

小さなソレは上空を横断するかのように、猛スピードで飛んでいった。

サラの時といい今回のことといい、その傀儡が空中で『浮かんでいる』姿しか目撃したことがない。

だから「あれ程の速度で飛ぶこともできるのか」と妙な感心をしつつ、私は呆然とソレを目で追っていた。

ルティナがゼリューの元へ到達する直前で、ソレは何の躊躇いもなく全身から突っ込んでいった。

左眼の眼帯に手を掛け、左拳を上げる寸前の体勢。

突然のちん入者に対して、ルティナの動きが瞬間的に止まっていた。



刹那。



頭の中が締め付けられるように痛くなった。



耳鳴り。全身の脱力感。

そして籠手下の激痛。

気が付くと私は左腕を押さえ込み、冷たい地面の上で蹲っていた。