「いえ、少しもおかしくはないわ。
そんなことよりも、あんたは何故瘴気に侵されていないのよ。それにルティナも」

「うむ、俺ならば心配無用だ。何者にも屈しない、強い信念を持って日々を生きているからな。
つまり邪悪なる瘴気といえども、日頃から鍛錬を積み重ねているこの俺にとっては、取るに足りない存在なのだっ!」

右拳を振り上げ、宙を見据えながらいつものように熱く吠えている。

だが彼をよく見てみれば、通常時よりも流れ出ている汗の量が、明らかに多いような気がした。

それに先程握られた私の手も、少し湿っているような?

振り上げた拳も何だか小刻みに震えているような気がするし、碧色の瞳にもいつもの迫力がなく、普段から色素の薄い顔色も更に蒼白気味で―――て、まさか痩せ我慢?



「貴様、何故だ!?」

その声で振り向けば、ルティナが悪鬼のような形相で、ゼリューを睨み付けているところだった。