私は一瞬、困惑してしまった。

今まで『瘴霊の種』などというものを一度も見たことがなかったし、聞いたこともなかったからだ。

それに瘴気を排出する場所は確か――。

「そうだ。瘴気は通常、精霊の社近辺にある『瘴気の穴』から噴出されるものだ」

『瘴気の穴』はどの社にも、必ず数ヶ所は存在していると言われている。

その場所は鉱山付近が殆どで、この辺りでいえば「水の社」を挟んだ、反対側の山に位置するという話だ。

しかし噴出量は年2〜3回程度と少ない。

それに大気中で蔓延しているものと同様、低濃度の排出量でしかなかったはずである。

「『瘴気の穴』から噴出されるものは低濃度なため、魔物もそこへは群がってこない。
だがこの『瘴霊の種』には、瘴気の穴から噴出する濃度の、約数百倍の瘴気が凝縮されている。
だからこそ魔物が、この場所に集まってくる」

モンスター・ミストが出現すれば、魔物は湧いてくる。

それが瘴気のせいだとは知らなかったが、「魔物を引き寄せる霧」――その正体が瘴気の塊であるのならば納得できる。

しかし解せないのは。

「それじゃあこのモンスター・ミストが、『瘴霊の種』を生み出しているってこと?
なのに破壊って???」