痺れと全身を暴れ回るような激痛。もし「大きな雷に打たれる」とするならば、こんな感覚なのだろうか。

「精霊術は使えないが『精霊の加護』ならば発動するはずだ。
君はその能力を使って、この場から早々に立ち去るがいい」

魔物は何事もなかったかのようにそう言い残すと、木々の間へと消えていった。

横たわったまま、呆然と後姿を見送っている私だけが、その場に取り残されていた。

彼は私には『何も』していない。

こちらに敵意も見せなかったし、攻撃も――指一本さえも動かさなかった。

単に私が彼に触れようとしただけである。

それともアレは私にかけたものと同じ、防御術の類だろうか。

だが相手は上位クラスだ。私の知らない術を使っていたとしてもおかしくはない。

その辺りのことは、あまり深く考えない方がいいのかもしれない。

しばらくの間、全身に感じる痺れと痛みで、立ち上がることさえできなかった。

あの激痛でよく死なずにすんだものだと、我ながら感心してしまう。

ようやく何とか起き上がれた私は、早速掌へ意識を集中させてみる。

「烈風天駆(ヴァン・ヴォレ・ヴィン)」

他にもいくつか思いつくままに術を唱えてみたが、何れも駄目だった。

昼間の時は弱いながらも使用できたが、今回は精霊石さえも反応しない。