「君は瘴気に侵されていた。
俺がそれを中和して、影響力を一時的に防いでいる。
が、およそ3時間程度の効力しかない」

「え!? 防いでいる???」

「君の身体に、防御(ガード)用の薄い膜を張った」

私はその言葉で、自分の両手や体中を見回してみた。

それらが先程から何故かキラキラと輝いて見えていたが、もしかしたらこれがそうなのか。

「但し体内に瘴気が入り込まない代わりに、精霊術も使えない。
それにこれはあくまでも、瘴気を防御するためだけの処置だ。
外部からの攻撃を防ぐこともできない」

つまり今攻撃を受けてしまうと、防御さえもできないということなのか。

私は愕然とした。

精霊術を使えない精霊術士なんて――。



「あ……あなた一体、何を企んでいるわけ?」

「企む?」

「そうよ。術を封じて、その隙に私を一体、どうしようって言うの!?」

混乱しつつも精一杯張った私の虚勢に対して、魔物は少し吃驚したような顔付きを見せた。

しかし直ぐにまた元の険しい表情に戻る。

「どうもしない。ただ君を殺す理由がないだけだ」

それだけを言うとこちらを振り向きもせずに、そのまま前へ歩き出そうとする。

「ちょ…! それって、答えになっていないわよ!」

その返答に納得のいかない私は走り寄って、思わず彼の翼に触れようと手を伸ばした。



が。



雷のような轟音とともに、私は地面へと投げ出されていた。