思った通り、である。

この魔物もサラたちと同様、『精霊の加護』を知っていたのだ。

私の顔を眺めていた魔物が、少しだけ眼を細める。

「やはりそうか。
術無効化は、ヒトにも魔族にもない能力だ。
かつてこの能力を、意図的に創り出そうとした者たちがいた。ヒトは魔族に、魔族はヒトに対抗する手段として」

この話は初耳だ。そのような能力を意図的に創るなど、聞いたことがない。

「だがそれは両者とも未だに成し得ていないはず。
『精霊の加護』という術無効化能力には、『精霊の意思』が必要不可欠だからな。
地上に居る我らが簡単に創り出せるものではない」



(精霊の意思?)



何のことだろうか。

……それに。

(術無効化?)



この魔物は今『精霊の加護』が、「術効力を無効化」できると言った。

だが実際に、私が目の当たりにしたアレックスの能力は、「術効力を防御」していただけに過ぎない。

つまり効力を消失せずに防御術と同等の能力―――ただ攻撃を防いでいただけだった。

『無効化』というからには当然、相手の術効力も消失させなければならない。

それは防御能力とは異なるはずだが、この認識の矛盾は一体何なのだろうか。