「ルティナさん〜大丈夫ですか〜?
凄い汗です〜。顔色も悪いですよ〜」

「大丈夫だ……問題はない……」

あたしは伸ばされたエドの手を払い除けると、気力を振り絞って立ち上がった。

この程度で立ち止まることはできない。

12年前にあたしを――両親を裏切ったあの男を、決して許さない。

「ルティナよ、君は何をそんなに独りで頑張っているのだ?」

「何?」

「両親の敵を討ちたいという気持ちなら、俺にもよく分かるのだ。
出来ることならば、俺の両親を殺した敵である憎き『流行病(やまい)』を、俺自らが手を下して抹殺したいと思っているのだぞ!」

「アレックスさん〜『流行病(やまい)』は抹殺なんて〜できませんよ〜」

勢いよく拳を振り上げたアレックスに対して、エドは即座に突っ込んだ。

「む……む無論だ。俺もそのくらいは分かっているつもりだ。
それと同等の気持ちを、自分でも持ち合わせていると、言いたかっただけなのだ」

アレックスは直ぐに咳払いを一つしたが、その白い頬には少し、赤みが差したようにも見える。

「だが復讐からは何も生み出さないし、得るものなどもないはずだ」

「……何だあんた、今頃あたしに説教するつもりかい」

「いや、説教などするつもりは毛頭ない。
だが今の君を見ていると、何故か生き急いでいるような気がして仕方がないのでな」