「モンスター・ミスト?
それは一体、どのようなものなのだ??」

「モンスター・ミストというのは〜ルティナさんの話によれば〜…(以下略)」

また別の単語説明が始まったようである。

私はガクリと首を項垂れるのだった。何故か振り出しに戻ったような気分だ。

ここで再び、恐る恐るルティナに視線を移してみると、眉間の皺が先程よりも更に深くなっているような気がする。

それに覗いている翠眼には、怒りに燃える赤い炎がチラチラと揺れて見えた。

組んでいる指も苛々と落ち着きなく動き、今にも全身から殺気が噴出しそうな気配だ。

これはもう、本気でまずいかもしれない。

「あ、あのさぁ、ルティナ」

「なんだ」

ビクビクしながら話し掛けた私に対して、彼女は前を見据えたままで機嫌の悪そうな返事をした。

その威圧感に気圧されそうになったが、いや、ここで怯んではいけない。

「ええと……良い天気、ねぇ」

「天気はさっきから良いだろうが。今更言うことではない」

「………」

いやいや、ここで怯んではいけない。

「あの……あ、じゃあさ。ルティナの左眼って、何で眼帯しているの?
もしかして、怪我か何か?」

口に出してから直ぐに、物凄く後悔した。

その質問を訊いた途端、彼女が無言で睨んできたのだ。

氷のように冷ややかな視線だったため、私は一瞬で氷結してしまっていた。

いやいやいや、ここで怯んでは―――。

―――てか、それはもう完全無理だしッ!

これ以上、会話も続きそうにない。