「アクニカ村って、明日のお昼には到着できるのよね。ディーンたちの村までは、あとどれくらいかかるの?」

私はエドが用意してくれた夕食の山菜スープに舌鼓を打ちながら尋ねた。

それにしても毎回思うことだが、彼の作る料理はかなり美味しい。

手持ちの保存食と今の時期に生えている食用の野草やキノコ、彼が常に持ち歩いているといういくつかの調味料だけでこんなに美味しい物が作れるとは。

『芸術士』という術士の特性だからなのか、手先が器用なのである。

聞けばエドはキノコの選別もお手の物だという。彼にこんな特技があったことを知り、私は驚いていた。もしかしたら吟遊詩人などではなく、料理人になったほうが良いのではないだろうか。

「フィオス町は森を一つ越えた先にあるから、そこからはかなり近いよ。アクニカ村から歩いて1〜2時間くらいかな。
俺たちの村はその先の山を登ったところにあるから、休憩を抜きに考えると、合計1日半弱くらいで到着するはずだよ」

「1日!? てことは、丸一日も山登りをしなくちゃならないの?」

「ああ。山の高さはそれほどでもないが、多少入り組んだ場所にあるからな。今から覚悟をしておいたほうが良いかもしれないな」

昔ハイキング程度でなら学校の行事で山に登ったことはあるのだが、長時間登山はあまり経験したことがなかった。

「もっとも、順調にいければの話だけどね。これでも予定よりは、3日もタイムロスしているわけだし」

「そうですよ〜エリスさん〜。この前のようなことにはならないように〜お願いしますよ〜」

エドが眉を顰めながら私に言ってくる。