その日の執務を終え、外を見ればもう月が天高く上っていた。
久しぶりに難しい案件があったせいだ。
「陛下、本日はどちらでお休みになりますか」
どちらで、と言うのは、どちらの姫の部屋で眠るのかという意味だ。
今日はどんなに美しい姫でも、相手をするのは面倒だ。
「すまんが、今日は自室で休む」
「かしこまりました」
明かりを持った侍従に先導させ、自室へ戻った。
普段ならまだ女官が付いているせいで一人にはなれない。
けれどその女官も断ったから、珍しく一人きりの時間が訪れた。
しかし、それは間も無く破られた。
轟音と鋭い光、それから突風が部屋を襲ったからだ。
「陛下!」
「陛下、今の音は何ですか!?」
控えの間に詰めていた騎士達がなだれ込んできた。
俺はとっさに伏せたため、怪我はなかったが、部屋の中はひどい有様だった。
この部屋だけ嵐が訪れたかのようだった。