自分にくっつくマーガレッドを気にする事なくどこか遠くを見つめていたローランは、何かを感じ取ったのか黄色い左目を鋭く細める。




 「……戻るぞ。」


 「えぇ!?」


嫌だと駄々をこねるマーガレッドを軽々と脇に抱え、ローランは力強く地を蹴った…




すると2人の姿はこの場から消え、2人がいた場所にヒラヒラと緑の葉が舞い降りたのだった…







闇の者が消えると共に、この地に現れた青いローブを見に纏った2人の人物。





 「糞野郎!」


倒れるシュウを見て黒髪の男性ラルフは闇の者を追おうと地を蹴る。


だが、今にも走り出しそうなラルフの腕を掴むと、青い髪の少年カイリは彼を無言で止めた。




腕を掴まれ振り返ったラルフはその腕を振り払おうとするが、カイリは真剣な面持ちで首を横に振る。





顔をしかめながらカイリを見下ろすラルフは、諦めたのか舌打ちをし腕を組む。



苛々している様子のラルフから目をそらすと、カイリはシュウの傍にしゃがみ込み、不審そうに目を細た…





青白い顔をし、微かに開いた唇は酸素を吸っているが、その呼吸は浅い…



ざっと見渡す限り、そんなに酷く目立つ傷はないが、あえて言うなら胸の辺りが血で染まっている事だろう…



何かに刺されたように服は破れているが、そこに傷はなく、痕すらも残っていない…


服を染める赤い血も、シュウの血なのか、それとも敵の血なのかもわからない…







 「……急ぎましょう………」


状態を確認したカイリは立ち上がり低い声でそう言うと、表情を隠すように深くフードを被る…


カイリの言葉にラルフは辛そうに息をするシュウを背に抱え走り出す…






そして青いローブを着た2人は研究所を目指し、物凄いスピードでその場を後にしたのだった…








木々の葉はザワザワと揺れ、その隙間から差し込む木漏れ日が笑うように遊んでいた…


人気もなくなったこの地には、微かに流れた赤い液体が残るのみとなったのだった…