怪しく笑いながら地に足をつけたマーガレッドは、倒れるシュウを後ろから抱き締めると、愛おしそうに紺色の髪を撫でていた…




 「お前、またヴェインにやられるぞ?」


ローランは木の幹に背をつけたまま腕を組み、シュウを胸に抱くマーガレッドへと呆れたように呟いた…


その声にローランへと鋭い藍色の瞳を向ける…





 「大丈夫だよ。シュウはそんなに簡単に死んだりしないから。」



血の気のない掌で優しくシュウの頭を撫でるマーガレッドの言葉に、溜め息を吐きながらシュウへと目を向けたローランは、微かにだが驚いたように数回まばたきを繰り返した…




何故ならば、心臓を貫いたはずなのに出血はそれ程なく、胸の辺りをほんの少し赤く染めただけだったからだ…


確かに、鋭き武器となった枝はシュウの胸を捕らえた…


その証拠にシュウの服は破れている…


なのにそこから見える彼の肌には傷の痕すら残っていない…







 「これで証明できたんだ。漆黒のDRAGONは主を殺る事だけじゃ我が物にはできないって事が……だから大丈夫だよ………」


そう言うと、まるでお気に入りのぬいぐるみを抱き締めるようにシュウの体に回す腕に力を込める…






 「もうすぐで僕達の物になる……漆黒のDRAGONが……そして、主であるシュウが………」


 「フンッ……」


シュウの肩に顎を乗せ、楽しそうに呟くマーガレッド…


そんな彼女を見て、ローランは鼻で笑うとそっぽを向いた…





 「ん?そう言えばさ、ピアス、どうしたの?」


そっぽを向くローランへと目を向けると、不思議そうに首を傾げるマーガレッド。


シュウを地に寝かせるとローランに歩み寄る…




近づいたマーガレッドは背伸びをしローランの右耳のピアスを見つめる。


前まで確かに2つあった丸いピアスだが、今は1つしかなくなっていた。




 「ねぇどうしたのさ?」


 「さぁな……」


何も言わないローランに抱きつき甘えるように問うが、ローランは答えようとはしなかった。