「本当覚えてないのかい?」

「はい。」


何度聞かれても答えは一緒だった。


「そうか。でも他の事は覚てえるんだよね?」

「はい。」

友達とか家族の事は覚えてるけどやっぱり彼女だけが思い出せない。


「そうか。」


おっさんはその後なんにも話さなくなった。

沈黙の中またドアが開いた。


そこに立っていたのは彼女だった。


「隼人本当に良かったね。」


「誰?」


とっさに出てしまった言葉は、彼女の耳に届いてしまい、彼女は、え・・・っと言う顔をしている。


それに気付いたおっさんが彼女と一緒に部屋を出た。


一人になった俺はずっと彼女の事を思いだそうとしていた、でも思い出せない。