「あの女の子は誰ですか?」


そう聞いた俺の顔を見ておっさんが言った。

「隼人くんの彼女だよ。分からなかったのかい?」


まったく分からなかった、俺に彼女なんていたんだ。


黙ってしまった俺を見ておっさんの顔が険しくなってきた。


「隼人くんはもしかしたら事故のせいで記憶を失ってるんじゃないかな?」


はぁ、一瞬目の前が真っ白になった。
俺が記憶を失ってる?そんなことあるもんか、いやあってたまるか。
俺はおっさんの言葉を頭の中で否定した。


でも体は正直で彼女の名前がどうしても出て来なかった。


「隼人くん大丈夫かい?」


おっさんの一言で我に戻った。


「おっさん俺あの子の名前がでてこないんだ。」


おっさんの顔がまた一段と険しくなった。