さっきも説明したが、まだ肌寒い季節だ。


千秋は下にロンTこそ着ていたが、それでもこの寒さは堪えるはずだ。


しかも自分の着ていたものを犬の身体を拭くために使うなんて、しかも他人の犬のために使うなんて!


「シャツなんていくらでも洗えば使えるじゃないですか。それにスピカが風邪を引いたらマスターに申し訳ないし」


イケメンだ。この子チョーイケメンだ。


心が綺麗すぎて俺の心が痛い。なんという無害な戦闘兵器。


「お前、ほんとイケメンだな」


「え?」


何気なく呟いた独り言が、千秋にも聞こえてしまったようだ。


「いや、超イケメンだなぁ~と思ってさ。俺が女だったら惚れてたぜ」


ふざけた調子で続きを答えると、スピカの身体を拭いていた手が止まった。


スピカも不思議そうに首を傾げている。