「スピカ! カモン!」


千秋の声に反応して、ボールを咥えたまま岸へ戻るスピカ。


岸に上がると身体を震わせて水気を飛ばすと、一目散に千秋の元へと走って来る。


足元までやって来ると、咥えていたボールを離して、尻尾をブンブン振りながら千秋の顔を見上げた。


褒めてほしいんだろうな。でもお前は怒られる運命なのだよスピカちゃん。


「たく、仕方ないなぁ」


千秋は小さく溜息を零すとシャツのボタンを外し始め、


「そんなんじゃ風邪引くぞ」


上着のそれをスピカに当て、身体を拭き始めた。


「ちょっ、なにしてんだお前!?」


「なにって、スピカの身体を拭いてるだけですけど?」


「だからなんで自分のシャツを使うんだよ!」