ゴウさんの作品は一通り読んではいる。


恋愛・青春・SF・ファンタジーと様々なジャンルがあったけど、どれもシリアスな内容と展開で笑いの要素はほとんどなかったはずだ。


よっちゃんさんの言動からするに、きっと彼がそういった要素を添削していたのだろう。ゴウさんの過去の作品全て。


「大変そうですね。作品を作るって」


「大体ゴウのせいだけどね。あいつ作品が行き詰ったり悩んだりすると、すぐに笑いと下ネタに走り出すから。それさえなきゃ文句なしの作家様なんだけど」


呆れたようにマミさんが肩を竦める。


二人の激しい戦いはすでに慣れっこなのか、マミさんも竜司くんもマスターも意に介せずといった感じで、個々の業務をこなしている。


あれだけ大きな声を上げているのに、スピカに至っては熟睡だ。日常化しているのだろう。


「でも、若手とはいえ作家に暴言吐きまくるのは普通じゃ考えられないですよね? ゴウさんもボロクソ言われながらも平気な顔して修正してるし、なんだか変なコンビですね」


編集と作家の世界なんて、俺には縁がないことだし全然知識もないけれど、仮にも売れっ子作家にあれだけ感情をむき出しにして意見を言うのは普通じゃありえないことだろう。