そう言うと、よっちゃんと呼ばれる人は別の原稿用紙を手にとって、重ねられた用紙の山の一番上に置いた。


「ここの滝沢の台詞。


“俺、結婚したら告白するんだ”


おかしいでしょ!? 結婚してから告白って意味不明でしょ!」


「本物の愛に、言葉なんて必要ないんやで」


「すげぇ良いこと言ったと思っているようですが説明になってませんから。どや顔決めても俺の心には一ミリたりとも響きませんから。それにまだ修正箇所はたくさんあるんですよ先生」


「ほんま? よっちゃん、いくらなんでも人の荒を探しすぎやろ?」


「こっちだって探したくねえけどオープンドア全開だとどうしても見つけてしまうんですよ! なんですかこれ!?


“宮野はセックスの最中思い立った。もし自身の雄が右手にもう一つ付いていたら、口内と膣内を同時に犯せるのではないかと”


……あのさ、濡れ場までは良しとしよう。普通の一般書籍でも、セックスの描写がそこそこ激しい物もあるから許容出来る。
でもこれはねえよ!? 右手がチンコっていう今までどういう生き方してたらこんな発想が生まれるんだよ! 怒りを通り越して逆にビビったわっ!」