その証拠にマミさんの眼は据わっていて、どことなく怒気が籠っている。


「竜司、その言葉絶対ちーちゃんの前で言うんじゃないわよ」


マミさんは言う。


「ちーちゃんはずっと苦しんでるのよ? 男でありながら女として生まれてしまった自分を、その事実を受け止めるしかない現実を。
でも、ちーちゃんはあんたみたいな男を好きになってしまった。男なのに、男を好きになってしまった。
その矛盾が今どれだけちーちゃんを苦しめているのかわかる? 『自分はやっぱり女なんだ。認めるしかないんだ』って、きっと自分の心を否定してる」


「心を……否定している?」


「そうよ。ちーちゃんは心の整理がまだ出来てないわ。何十年もの間抱え込んでる……ちーちゃんにしたら一生付き纏う悩みなんだから当然よね」


俺は、千秋に何て言った? なんて告った?


男の千秋が好きになったんだ。とか言っておきながら、千秋が女の子で内心ホッとしている自分がいる。


ホッとしてちゃ駄目なんだ。千秋の悩みや不安を、俺自身も真摯に受け止めなくちゃいけないんだ。


もし俺が千秋に手を出したら、千秋と繋がってしまったら、千秋の心は傷ついてしまうのだろうか?