何故か振られたのはタケルなのに、


「っるせぇ!!ひとみがあかりば家上げたからだろーが!!」

とか


「…父さん、傷心の息子の傷に、これ以上塩を塗るのは辞めてくれないか…?」

だとか

「…母さん!!それちげーだろ!!
もっと、「お隣りさんの子ば手ぇ出してぇ〜!!」とか言えねーのか!!」

とかとか。


何故か、奇天烈な家族一人一人に対して、バカ丁寧に突っ込みながら、

「明日早いから寝るっ!!」

と、寝た自分。

(傷心に浸る暇すらない。)


そう思いながら、牛舎のシャッターを開け、搾乳室に入って行った。

スッとタケルは搾乳室の中にある時計を見遣る。


…ちょうど、4時過ぎた頃。


あかりは4時前にはいつも来ていたから。

(…ああ、やっぱりか…)

なんて思ってた。


昨日やった事に後悔しながら。


そんな時である。


トンッ。


背中に軽く衝撃が走った。


「…え?」

タケルは後ろを見遣る。


そこには

「ハァッハァッ」

と息切れをしながら、タケルの背中を抱きしめているあかりの背中が見えた。