『あんたなんか真面目に勉強してればそれで良かったのよ!!』


この村に来る前、母に言われた事を思い出していた。


「…うん…」


この村に来て、2ヶ月。

当然、あかりは母の事も考えていた。


『なんで私の事見てくれないの?
いっつも勉強ばっかり』

いっつもそう思ってたから、最初は一方的な母の言葉を恨み、母の存在なんか忘れようとした。


けど。
『子どもが出来た』

それが発覚した、あの公園のトイレの中同様

やっぱり一方では母の存在を欲していた。


それは変わりようも無い事実で、変わりようも無い、母への愛。


そう思うのは、心のどこかで、母が私の事も愛してくれていたからではないのか。


あかりはそう結論に至っていた。


「うん!!怨まないよ!!

まず、タケルんとこ行ってくるね。」


「はいはい。


…行ってらっしゃい。」


あかりは祖母のその言葉を聞き、

バタン…と、裏口のドアを開け、外に飛び出した。


走って
走って
走って。


早くタケルの元へ行きたかったから。


…そして、早くタケルへ、その思いを伝えたかったから。

パタパタパタパタ


走って、流れる景色の中、タケルの家が見える。


あかりはスッと立ち止まり


(あぁ…なんて言えば良いんだろう)


そんな事を思いながら、また走る。


(素直な気持ち、伝えればそれで良いんだ!!)


牛舎のシャッターが開いてるのが見える。


そして、窓から見える、いつもの様に、搾乳の準備しているタケルの後ろ姿。



「タケルー!!!」


そう言いながら、タケルがいる搾乳室へ入り、


タケルの背中をギュッと抱きしめた。